第2回の今回は、アメリカで成立したTikTok使用禁止法について取り上げた。
TikTokは、世界中で爆発的な人気を博したショート動画共有アプリだが、その人気ゆえに、特にアメリカを中心に様々な議論を巻き起こした。
経済動向を毎回ひとつ取り上げ、それを徹底的に調べ、中学生でもわかるようにレポートしている。このレポートが明日の話題のタネになるはず。
1. TikTokの現状と人気の秘密
2.なぜTikTokに依存するのか
3.いいねの裏側
4.著作権の問題を回避したTikTok
5.買収劇の発端:なぜTikTokが買収の対象になったのか?
6.買収を巡る主なプレイヤー
7. 買収合戦の舞台裏
8. TikTokの買収が意味するもの
9.まとめ
TikTokは、中国のByteDance社が開発した、短い動画を共有できるSNSである。15秒〜数分の短い動画を作成・視聴できる手軽さから、世界中で爆発的な人気を集めてきた。特に若い世代を中心に、ダンスや歌、コメディなどのさまざまなジャンルの動画が共有されており、アメリカでは約1億7000万人のユーザがいる。
チャット機能やコメント機能もあり若者のコミュニケーションツールの役割になっている。実際顔は知らないけどTikTokで友達というのは今の時代普通なのだ。
人気の背景としては、短い動画で気軽に楽しめることはもちろん、トレンドが生まれやすいという点がある。
こっちのけんと - はいよろこんで
ROSE & Bruno Mars - APT.
この二つの曲はTikTokで流行し、どちらも億越えの再生回数になっている。
TikTokでバズる曲は、キャッチーなメロディやリズムが特徴的である。短い動画に合わせたテンポが重要で、聴いた人が思わず踊りたくなるような楽曲が人気を集めている。
アプリケーションなどにはアルゴリズムというものが存在する。
アルゴリズムとは仕組みだ。
強力なフィルターバブル(おすすめ機能)によりエコーチャンバー効果(似たような情報ばかり届けられ、自分の意見が正しいと信じてしまう効果)が発生する。
TikTokの中毒性への懸念は、広がりを見せ、米国の13州の司法当局が2024年10月、TikTokが意図的に若者の使用依存を強化する設計になっていると訴えた。
実際の研究でもエンターテイメント性とトピックの速さから、より楽しさを感じTikTokへの極度な集中状態を模擬的に体感するとの事だ。
つまり、情報の質や洗練され得たシステムという刺激、楽しさ、集中力、時間の歪みという生理的な影響、反復行動により、集中力が高まって没頭し、TikTokへの依存性と中毒性が高まると考えられる。
ショート動画を見ることで、脳内でドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が分泌される。ドーパミンは快楽を感じる物質で、報酬が期待される時に放出される。
米シンシナティ・チルドレンズ・ホスピタル・メディカル・センターのジョン・ハットン医師は、TikTokを「ドーパミンマシーン」と表現し、動画を見て笑ったり、楽しんだりするたびに脳がドーパミンの「報酬」を受け取り、それが次のスクロールを促すと述べている。
TikTokは便利な情報ツールになっている。一方でフェイクニュースも溢れているのが事実だ。ニュースガード(ネット上の情報サイトの信憑性を格付けする民間団体)が調べたところ、検索結果として上位に表示された動画の20%に偽情報が含まれていたとのことだ。
その中でも最近よく聞く言葉がディープフェイクではないだろうか。
そのディープフェイクの危険性がわかる事例を一つ取り上げたいと思う。
視覚効果アーティストのクリス・ウメ氏と、俳優でモノマネ芸人のマイルス・フィッシャー氏が組んでム・クルーズ氏のディープフェイクを作りTikTokに公開した。
(引用 : https://japan.cnet.com/article/35167468/)
上画像の左がモノマネのマイルス・フィッシャー氏。
右がその映像に視覚効果を使いトムクルーズのディープフェイク動画を作った時の映像だ。映像の中でゴルフをしたり、手品をしたり、ぎこちなく裏話を語ったりしている。
ディープフェイクにより、有名人などが言っていないことを言ったように見せかける内容を作ったり、暴動を煽るために誤った情報が使われたりするなど、さまざまな問題が起きている。この技術によって選挙の侵害やプライバシーの侵害が起きかねないという心配がある。
作成者のウメ氏は、自分が作成したほどの上手くできた動画は(少なくとも現段階の技術では)それほど簡単に作れるものではないいっている。
ウメ氏は、人工知能(AI)モデルのトレーニングに2ヶ月、動画の撮影に数日、撮影後の編集には約24時間費やしたと語っている。
「これらの動画の制作には多くの作業がともなった」「このプロジェクトのためには、プロの俳優を用意しなければならない。フィッシャー氏は、トム・クルーズ氏の物まねをさせたら右に出る者がいない。一方、私はディープフェイクの専門家で、視覚効果アーティストだ。作業に使えるプロ仕様のハードウェアもある。フィッシャー氏と私の2人は、いわばプロフェッショナルのチームだ。家で座ってボタンをクリックするだけで、私たちが制作したのと同じものを作れるわけではない」(ウメ氏)
だからと言って、今後技術が進歩しないと言っているわけではない。
数年後にはスマホ一つでディープフェイクが作れるようになることは限りなく可能性の高いことである。
ここまでTikTokの依存性など負の面ばかり伝えてきた気がする。
逆にTikTokは何がすごいのか。それはYoutubeやInstagram、Facebookが収益化の出やすいロング動画へと進む中、その真逆、いわば大手企業が見捨てたカテゴリーから成長している点である。
今となればYoutubeショート、InstagramのリールなどもあるがTikTokが先駆者なのである。
著作権付きの音楽を入れた動画の投稿は著作権侵害にあたり、見つかれば即消去されるのがお約束だった。Youtubeでは作品が無断使用されていないか、著作権者が自分で調べることのできるContent IDを採用し、著作権付きの音楽を使用した投稿数を大幅に削減した。
ここですごいのがTikTok。JASRACという著作権を管理する組織と手を組みユーザが自由に音源を使用できるのはもちろん、再生数に応じて著作権者に利益をもたらす仕組みを作ったのだ。これによりユーザは自由に音源を使用でき、現代のバズを量産しているのだ。
TikTokの買収劇は2020年8月に当時アメリカ大統領だったトランプ氏が大統領令に署名し、TikTokアプリのダウンロード禁止のための法案が可決されたことが始まりだ。
なぜトランプ氏はダウンロードを禁止したのか。大きな理由はByteDanceが中国企業ということだろう。アプリを通じて中国政府に利用者の個人情報が流出しているのではないかという心配があるのだ。位置情報やアプリの利用履歴などを分析すると、利用者の住所や職業などが特定できると言われる中、もしアメリカの政府の重要人物や、企業の幹部などの個人情報が中国政府に渡り、脅迫に使われたら、国家の安全に関わるという危機感がアメリカにはあるのだ。
しかも中国には「国家情報法」という法律が存在する。「いかなる組織や個人も、国家の情報活動に協力しなければならない」と定められている。
つまり、国からデータを渡せと言われると、中国企業は逆らえない可能性がある。
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